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2013.8.10-13 知床-Expedition

今年もまた、知床。ワンデイツアーを含めると4回目。半島一周は、2010年の夏にウトロから相泊まで3泊4日で漕破した。初めての“知床”だった。昨年は、ウトロ←→カムイワッカの滝のワンデイツアーと、相泊←→知床岬のピストンの2泊ツアー。今回は、2010年の逆回りで、羅臼側、相泊からウトロまでの半島一周計画。一番楽しみにしていたカズが参加できず、またしてもいつもの三人、マナミシェフ、タカヤ、papaだ!過去3回はいずれもお天気に恵まれ“暑い知床”だったのだが、今回は前日から雨、当日も雨の中のスタートとなった。海況は11日の午後からは岬付近の波高も、1m以内になりそうな予報だが、、、、。出発前に、ルサフィールドハウスに寄って、最近の情報を聞いてみると、今年はずいぶんヒグマの出没件数が少ないらしい。とは言っても、ここは知床。昨年は岬往復で延べ11頭目撃しているので、充分注意してゆこう!

8月10日 ☂→☂ 12:00 相泊出発→ペキンの鼻(船泊泊)
出発前のパッキングにまたしても、二人に遅れをとってしまったが、予定通り、12:00に艇を出した。さぁ〜!今年も知床が始まった!今日はどこまでゆけるだろうか?岸から100mも出ていないのに、うねりと波、追い風が強い!これは手強いツアーになりそうだ!進むにつれて、追い波がどんどん厳しくなってくる。一旦、モイレウシに逃げ込むが、進んでもせいぜいペキンの鼻がいいところだろうか?案の定、剣岩、メガネ岩をかわした辺りで前には進めない。今日はここに泊まろう!追い波と風雨にさらされた体はどんどん冷えてゆくが、風を避けられるような場所はなく、タープを張れるような状態でもない。モイレウシで上がっていれば良かったのか?ヘキサタープの片側を大きな石で押さえ、なんとかシェルターにして、インスタントコーヒーとラーメンを胃袋に流し込む。少し落ち着いたところで、それぞれのテントを張ろうとするが、暴風雨の中、一人では張れないので、一張を三人がかりで張り、やっと三張。乾いた物に着替えて、寒い中、無理してBEERで乾杯!マナミシェフ!またしても贅沢な料理に、風雨の中で舌鼓!今夜は早く寝よう!就寝!明朝のお天気に期待して、、、。

8月11日 ☂→☂ 停滞(船泊泊)
夜中から、雨、風、波の音で眠れない。4:30am、ソロテントの通気口から外を確かめるが、波も収まっていない。この波では「ペキンの鼻」の先端は相当な三角波になっているだろう。「停滞」かな?とも思いながら、テントの中を少し片付けていたら、マナミさんが起きてきた。「少し様子見ましょう!」と。「そうだね。この波では出れないね。」と、papa。それでも、6:00前には三人ともシェルターに集まり、タカヤが入れてくれたコヒーを飲む。マナミさんが知床の浜にいるとは思えない朝食を用意するが、雨がバチバチとタープをたたく。うねりの波が岸辺の砂利をさらう。「停滞だね。」前回一周した時は、お天気がよすぎて「停滞」したが、今回は本物の停滞。「停滞!停〜滞〜!」なんだか?嬉しいのである。さぁ〜!じゃぁ〜何をしようかな〜。タカヤは愛読書を持ってきたようだが、僕らは文庫本も置いてきてしまったし、釣りでもしますか〜?タックルボックスから赤いミノーを取り出し新しいフックに変える。ペキン川の河口付近、3投目であたりがきた。すぐに竿をしゃくり巻き始めると強い引きだ。魚体が光り、リールが逆回りする。なんとか手前に引き寄せると、申し訳ないことにえらに針が刺さっている。60cm近いカラフトマスの雄。放してもだめだね。食べましょう!タカヤがすかさずナイフを取り出し、見事に三枚におろしてくれた。少しの間日干しにして、半身は焚き火で焼いて、半身はマスとゴウヤのチャンプルに石狩鍋。白子はオリーブオイルでさっとソテイして醤油を少々!クリーミーでクセのないチーズのような豆乳のような。なんとも日本酒が旨い!豪華な夕食になった。マスを日干しにしている間、ペキンの鼻に偵察に行ったが、その先の湾は波が収まってきたようだ。明日に期待したい。

8月12日 ☂→☁ →7:15船泊→ペキンの鼻→カブト岩→知床岬→イタラワタラ→マムシの川南岸(泊)
雨風が収まらない。昨夜も海況が気になって1〜2時間おきに目が覚め、耳で外をうかがっているうちに朝になってしまった。今日は出ないわけにはいかない。岬を超えられないのなら、相泊に戻るしかないのだ。岬を回ったら前に進むしかない。波は昨日よりは治まってきてはいるが、ペキンの鼻の先は白い波が寄せている。「とりあえずいきますか〜!」朝食を終え、カヤックのパッキング。番屋にいた漁師が「今日も行かないのか?」と。「今日は行きます!」と、papa。7:00を予定していたが、少し遅れて出発!沖に出てみると岸で見ていたよりもうねりが大きい。追波とうねりにカヤックの尻が廻される。気が抜けない。なんとかペキンの鼻を通過したが、カブト岩が最大の難所だろう。そこを超えれば、岬付近の浅瀬はライニングダウン。その先はベタ凪の予定なのだ。それを信じて漕ぐしかない。カブト岩の沖を廻り込むか?手前の水路を抜けれるか!タカヤが先頭で沖に向かう。「抜けられそうです!」風雨にかき消されそうな中、タカヤが叫ぶ!マナミさんが先鋒で突入するが、ブーマーに持ってゆかれる!危な〜い!パパとタカヤが次いですり抜ける!なんとか通過した!岬の浅瀬付近まで行って、少しは安堵するが、風が濡れた体を冷やしてゆく。アブラコ湾に逃げ込み、やっとレーションを口にする。「せっかくだから、灯台までハイクしようか!」。タカヤは冷えきった体を風で冷やしたくないという。papaはベストのウェットとパンツもウェットなので、それほどでもないが、精神的な緊迫感からか末端がかなり冷たい。タカヤを残し、マナミさんと二人、岬の灯台を駆け足で往復する。ここが、最果ての「最果てだ!」再びカヤックに乗り込み、ウトロ側に廻り込むと、予定通り、ベタ凪の海だ!半島の裏と表でこんなにも違うものか!同じ海とは思えない。陽も射してきたではないか。さぁ〜!イタラワタラ辺り、15:00に付ける処で今夜は泊まろう!

8月13日 ☂→☁→☀ →8:00出発→カバルワタラ→カニシュの滝→観音岩→ルシャ→五湖の断崖→ウトロ(Goal!)
三日ぶりにゆっくり眠れた。霧のような雨が少し残っているが、空は明るい。穏やかな海況の中ウトロにGoalできそうだ。
残っているBEERを消費しよう!雨が上がったので、タープの片側をあげて知床の海に名残を感じながら三人ともマッタリしいた。マナミさんも朝食の準備に取りかかった。その時だった。マナミさんが、「あっ!」っと声を上げた!タープをあげた海側、目の前を、親子のヒグマが歩いている。まったく足音さえ聞こえなかった。近寄ってきたら、砂利を踏む足音が聞こえるものだと、、、。
子グマがヒョコヒョコ歩く後を、親クマがこちらを気にしながらもゆっくりと岸を遠ざかってゆく。我々も黙って目をそらさず時間を待つ。距離が少しずつ遠のいてゆく。不思議に怖さも動揺も感じなかったのは、三人とも同じだったようだが、もし、子グマがこちらに興味を持って近づいて来ていたりしたら、、、。三人とも特に慌てることもなく、立つことも、逃げることも、声を立てることもなかったのが幸いしたのだろうか?自分はまったくの「無の境地」だったような気がする。出艇の後、カバルワタルで海鳥の卵を狙って岩に登っていた親子グマも、あの親子だろう。カニシュの滝で「知床の洗礼」を受け、ルシャの出し風も心配したほどではなく、穏やかな五湖の断崖を漕ぎながら、「この知床を4度も。半島一周を右回り左回り2度も。このシーカヤックという道具で“旅”ができたのは、仲間があってこそ!」本当にこの二人に感謝している。ウトロ側、羅臼側双方からの半島一周を完遂したことで、「僕らの知床」はひと区切りかもしれない。

29才で始めた、リバーカヤックとカナディアン。夏の自由さが冬にも欲しくて、同じ年にテレマークスキーを手に入れた。こどもたちとの外遊びの始まりでもあった。テレマークで「利尻のピークから」。カヤックで「知床一周」。利尻は娘二人と出来たが、カヤックは、知床は、あらゆる面でハードルが高かった。次の目標は「孫と知床一周」かな?(笑)

▼マナミさん制作の、Yutube動画 知床Expedition「StormyDays : SandanKayaks 2013」! ぜひご覧ください!