6回目の知床。
〜知床が最高だとは、決して言わないのだが〜SEA KAYAKING IN JAPAN/内田正洋 著 の一節だ。大げさかもしれないし、そうでもないかもしれないが、シーカヤッキングツアーにおいて、僕はここ以上の場所をまだ知らない。
昨年のツアーは、マナミさんが南極に行っていて参加できず、また、ソクちゃんも日程が合わず、タカヤとカズ&papa(僕)の3人だったが、今年はその二人も加わって5人。今まで3人での長期ツアーしか経験が無いので凄く楽しみだった。たった5人で?と思うかもしれないが、知床で洋上で、5艇並んで進む姿はかなり迫力があるのだ。
昨年同様に、斜里のそよ風キャンプ場に前日集合、翌日早朝に相泊から出発だ。今年は予備日を入れて3泊4日、出来れば2泊3日で廻りきりたい。台風の接近と海況予想、さらに、Windityで波高と風の予報。メンバーそれぞれが、それぞれにシュミレーションしていることだろう。当初は初日に「男滝女滝」までと考えていたが、2日目の風を考えると、一気に岬を廻ってしまった方が良いだろう。ハードな「海旅」になりそうだ。さぁ〜!今年の「知床」が始まった。
1日目
知床半島をシーカヤックで回る場合、相泊から出てウトロをゴールにするケースとその逆がある。天気、海況、風。それぞれを睨みながら決めるのだが、今回も相泊出発とした。(今回を含め4回半島1周しているが初回のみウトロから出ている。そのツアーの最終日、向かい風と波に阻まれモイルスから相泊まで通常の2〜3倍の時間を要した苦い思いがあるのだ。)2日目・3日目の南東の風が強そうなので初日のうちに相泊(羅臼)側を走破してしまいたい。
羅臼の駐在所に計画書を提出(早朝不在のためドアに挿ませてもらった)知床峠を動画撮影しながら、羅臼へ向かう。(今回のツアームービーは則ちゃんが制作するので、〝ほしい絵面〟探しながら。)相泊に着くと、あの「新谷さん」が外で朝食の用意をしていた。明日からガイドツアーとのこと。知床は数年前に100回を超えてから数えるのをやめたらしい。今年は、7度目のアリューシャンを7月に終えている。出艇前にアリューシャンの写真を見せて頂き、カウンターパンチを食らっての出発となった。
9:10。ほとんどベタ凪、多少の追い風。最高のコンディションの中、漕ぎ出した。早速、5人横一列に並んで撮影!右手奥20km先に国後島がすぐそこにある。知床岬より近いのだ。こんなにはっきりと見たことがあっただろうか?凄い眺めだ。何度来てもこの雄大さ、自然の濃さ。「今年もまた、来てしまった。という感じだろうか!?」
2時間ほど漕いで、モイルスで休憩。いつもはここを初日の幕営地として、晩酌のおかずにオショロコマを釣るのだが、今回は先を急ごう。ペキンの鼻、カブト岩、赤岩を順調に越え、潮が上がっていてライニングダウンもほとんどなく、15:00岬をかわしアブラコ湾へ。日没が近づくのでこれ以上は進めないだろう。先ずは、BEERで乾杯だ!夕陽が沈むのに合わせて、灯台までミニトレッキング。焦げる音がするかのようにオレンジ色に燃える夕陽が目の前に沈んでゆく。さぁ〜〜飯だ〜〜!則ちゃん食当のグリーンカレーがめちゃ旨し。辛〜い!うま〜〜イ!あ〜〜幸せ!4時起きだったのでみんな疲れているようだ。テントに入らず寝てしまった者、2名。
2日目
今日はゆっくりスタートと決めていたが、皆、6:00には起きて来た。恒例の、朝BEERを頂いたあとは、則ちゃんの蕎麦ガレットと野菜スティックで朝食。9:30出発。則座ディレクションのシーン(5人で出艇して左の岩に姿が消えてゆくシーン)を撮る為に海岸にカメラを残し、5人揃っての漕ぎ出しシーンを撮影、また岸に戻ってカメラ回収し、やっとこさ出発。予想通り、ベタ凪無風だ。一年前の道取りと風景を思い出しながら文吉湾、獅子岩、ポロモイと進む。海賊湾で水を補給、この辺りからガヤ(メバル)が入れ食い。大きめのモノだけゲットして今夜のオカズにすることになった。カシュニの滝で洗礼の水浴び、ひゃ〜ひゃ〜言いながら、今夜の幕営地タコ岩に到着。今日も25kmを漕いでしまった。
今夜はマナミさんのピザにミネストローネ、海水+真水+ダシで炊いたガヤめし。知床の先端でこの食事メニューなのだ。さらに!この日は、カズの33才の誕生日。知床ツアー中にバースデイを祝って頂けるとはなんと幸せ者か!?知床岬におじさんたちの〝ハッピバースデーツ〜ユー〜〜〜〟が満天の星空に響きわたるのです。就寝。
3日目
今日も朝から雲ひとつ無い天気だ。5時前から陽の光りでテントの中が暑い。沢水で冷やしてあったBEERが火照ったからだに沁み渡ってゆく。こんなことをしていていいのだろうか?いや、こんなことをする為に来ているのだ!
今朝もまた贅沢な朝食を頂く。前菜、副菜サラダ、メイン、チーズを乗せて知床オーブン(無水鍋裏技)で焼いたバケット。時にはこれにスープが付くのだ。
今日は、30km近く漕ぐことになる。本日の行程で一番の懸案事項が「ルシャだし」だ。半島に南東の風が強く吹くと、ウトロ側の海が穏やかでも、ルシャ山とトッカリムイ岳の間のルシャ川の沢に添って強烈なダシ風が吹き下ろす。酷いときは2km沖までカヌーが流されるとか、タコ岩あたりから海がざわつくとか、突風で2人艇でも簡単に〝沈〟するとか?知らないうちにメンバーが見えなくなって4km先にいたとか?新谷さんの本でも、相当の難所として紹介されているところなのだ。確かに近づくにつれ、風波が立ち、時折、突風に煽られる。ルシャ川の2〜3km手前でこの風だ。本流に入ったらどんなことになってしまうのか?と、誰もが恐れていたと思うが、近づくにつれ、さほどでもなく、かえって追い風になってくれたり、、、ほどよく風が待ってるようだ。なんとか、ルシャを横断した。
今回のツアーで、不思議なことは、〝熊〟を一頭も見ていないことだ。いつもの年なら、ここまでで10頭近く見ているのだが、暑さのせいなのか???キツネも見ていない。夜中に熊らしきものがテントの周りを歩いていたような〝もの音〟もしていたが、、、キツネも見ないのは初めてだ。やっと?ルシャを越えた次の小さな川で、親子連れの熊を見たが、今回のツアーではこれが最初で最後だった。
この先も穏やかな海況が続くと思っていたのだが、カムイワッカ辺りからうねりが強くなって来た。切り立った岸壁に寄せる返し波も複雑な渦をともなってスターン(艇のお尻)を捕まえる。2日前、漕ぎ出した時には至福のパドリングが、今は「早く終わってほしい。」と思ってしまうのだ。カムイワッカから、黙々と漕ぎ続けること3時間。岩尾別川でだし風が少しあったものの、無事ウトロに到着した。
結局、毎日25km漕ぎ続け、2泊3日でのゴールだ。晴天が3日間続いてくれて海況もほぼほぼ穏やかで、ルシャだしも多少経験し、なんといっても「5人で旅した知床」。もう、こんな経験は出来ないかもしれないと言いつつ、また来年も来てしまうのだろうか?
ツアーは、8/5〜8/9でしたが、HP掲載が遅くなりました。
2016.8.18 papasdesign-たなかさだふみ